迷路だらけの宝島
ファウストとメフィストの賭けは続く。といっても、舞台も時代も転々と移り、果ては神話の世界にまで至るから、筋を追うだけでは辛い上に勿体無い。 かつてゲーテが宮廷の要職を放り出してイタリア旅行に出てしまったように、筋は投げ出して、しばし古代のエーゲ海で、豪華キャストによるきらびやかな舞台を楽しまれたい。 中盤を楽しむほど、終盤の「灰色の女」と契約の「時」は際立つ。 さて、虚構を常識で裁くのは野暮だが、第一部で直接1人、間接的に2人を殺し、第二部でも・・・。となれば、最終的な志の如何にかかわらず、地獄行きだろう。賭けは当然、メフィストの勝ち、か? 池内訳の結末は、死を間近にした一老人ゲーテの願望の投影かもしれない、と読者に思わせる。ファウストは人格者というより普通の人だ。訳語、訳文と最小限に絞られた注、という目立たない方法で、新たに大胆な解釈を加えたように私には見えた。 迷路だらけの宝島が、多くの研究者を惹きつけ、研究書で図書館が建つ。そういう豊かな作品である。
集英社
ファウスト〈第1部〉 (集英社文庫ヘリテージシリーズ) 神曲〈3〉天国篇 (集英社文庫ヘリテージシリーズ) 神曲〈1〉地獄篇 (集英社文庫ヘリテージシリーズ) 神曲〈2〉煉獄篇 (集英社文庫ヘリテージシリーズ) ファウスト (朝日文庫)
|